亀野の言葉を選ばない雑記帳

かめのが徒然書くところです。真面目なことからパッパラエピソードまで。

ティーンな私の中にあった、マイノリティへの眼差しについてのモヤ

いつのことかは忘れてしまったが、まだ私が中学生か遅くとも高校生前半くらいのことだ。
テレビで「様々な人が人生の節目になる場面にハンディカメラを持ち込んでドキュメンタリーを撮る」みたいな企画が放映されていた。

確か、まだ売れていない役者だか芸人だか、とにかく芸能界に身を置く女性だったはずだ。
彼女がカメラを持って行ったのは実家の両親の元だった。

「私は……、実は、男女どちらのことも好きになるんだ」

バイセクシャルであるという家族へのカミングアウト、彼女がドキュメンタリーの場として選んだ場所だった。
確かご両親は「カメラなんて持ち込んでどうしたの?」みたいなリアクションから始まり、話を聞いて、全てでないにしても受け入れるような、そんな流れだったと思う(カメラ外れてから絶縁とかでなければ)。

それを一緒に見ていた母が言った。
「なんでわざわざ言うんだろうね。だって男の人好きにもなれるんでしょう?」
要するに母は「男性と結ばれる可能性があるんだから黙っておけばバレないかもしれないのに」、あるいは「男を選んで普通に生きろ」のどちらかを言いたいらしかった。
私はその当時、何も言い返さなかったが、しこりとして胸に残った。本当の自分を肉親に理解されたいという欲求はそんなに愚かだろうかと。


先程の番組と前後関係はよく覚えていないが、別の番組を観た。これも私がローティーンの頃だったはずだ。
当時あまり深夜番組を観なかった(寝かされていたので)のに珍しかった。何かの休暇中だったんだろうか。
ナレーションが神谷浩史さんだったことを覚えている。というかそれに気づいた私が興味を持ってチャンネルを止めたのだと思う。
これもドキュメンタリーで、ゲイの合コンだった。

「僕は〇〇と言います。趣味は~~。ネコです」
「僕は××です。最近は△△に~~。えーと、タチです」

よくある自己紹介に必ず添えられるタチネコの申告。
母はこれを聞いて露骨に不快な顔をした。
「要するに身体の関係探しでしょ」
母の手でチャンネルが変えられた。
私は何も言わなかったが、疑問に思っていた。
(どうせ男女の恋愛や合コンも多かれ少なかれそういう関係を持つものじゃないか)
(男女は性役割が決まっているけれど、同性同士ならどちらの役をするか見た目には分からないじゃないか)
(男女の結婚でも性生活の不一致は離婚理由になるのだから、前もって名乗っておくのは合理的じゃないか?)


基本的に、母は(セクシャルに限らず)マイノリティに対して不寛容である。
不寛容というか、64年生まれのストレートのテンプレという感じだ。
本人は大層おモテになったらしいし、中学生から彼氏が絶えたことがないという。
ゴリゴリの異性愛の中に身を置いて、結婚して子どもを2人産んで、まさかそれ以外がいると思わず生きてきた典型。
……自分の娘が己のセクシャリティに悩んでいることなど考えたこともないだろう人間。


死ぬほど遅れてきた反抗期が大卒後にやってきた私は、ちょうどメディアでもLGBTetc.が盛んに取り上げられるようになったこともあり、黙らずに母に意見するようになった。
……そして、必ず最終的には言葉での殴り合いになり感情が振り切れた私が泣くのだ。
永遠に分かり合えないと諦めた。
時を同じくして、私は自分の在り方を悩むことになる。
自分が女性であるとハッキリ言いきれるのか、自分に性愛があるのかどうか。
自分は単純に貞操概念が古風で身持ちがカタいだけだと思っていたが、心当たりがまあまああった。

 

kameno-ryo.hatenablog.jp

 


相談する相手もそういない。いや相談したところで何になる?
いっそ一度適当にやってしまえばハッキリするだろうかとヤケクソになりかけたのも一度や二度ではない。


母と喧嘩すると彼女はよく「この気持ちは親にならないと分からないよ」「産んだこともないくせによく言う」というようなことを言う。
確かに、今の私には分からないのだろう。
だが、彼女は果たして「親になる・ならない以前の段階が自分には出来ないのかもしれない」「そもそも自分の性別が分からない」という苦しみが分かるのだろうか。


父とは交流が薄く、何より母よりも6歳上だ。旧時代の考えを持っていることは十分考えられる。
私は両親には死ぬまで己のセクシャリティの悩みを話すつもりはない。
おそらくまた深夜まで怒鳴られるのがオチだろうと予想されるからだ。

最近は「結婚も子育てもする気がない奴」と認知されているようで、間違ってもいないが合ってもいないという状況にある。
なんにせよ恋愛も出来ない半人前、子育てしていないという点で見下されているきらいはある。

もう、どうでもいい。
きっと旧時代の人間が死に絶えるまで私の絶望は続くのだ。
そしてその時にはまた新たな概念が生まれ、今度は私が旧時代の人間になって誰かを絶望させるんだろう。
人がこの世界にある限りどうにもならない連鎖だ。

 

 

やっぱ人間滅ぼそうぜ!!!